導入(共感→結論→再現性)
「頬に色を足したはずなのに、写真だと顔だけ大きく見える」「控えめに塗ったのに午後には血色が消える」「同じチークでも日によって浮く」——この不安定さはセンスの差ではありません。肌の温度(パーソナルカラー)に対する“色相・明度・艶”と、のせる“位置・面積・ブラシ形状”の噛み合わせが少しだけ外れているだけです。
結論は簡単。肌の温度(イエベ/ブルベ)×瞳のコントラストに色と艶を合わせ、黒目・小鼻・耳珠(耳の入口)の三点で位置を決め、直径2.5〜3cmの最小面積で入れ、骨格に沿うブラシを選べば、誰でも血色は一段明るく、頬は小さく、輪郭は引き締まる仕上がりが再現できます。
本稿は、春夏秋冬タイプ別に色名・座標・形・艶・ブラシ幅を数値化。さらに顔型・年齢・肌質・季節・TPOまで拡張し、失敗の即修正、手入れ、1週間練習メニューまでひと続きで提示します。今日からサロンにも家でも、そのまま使えます。
チークが顔色を決める原理と“位置の黄金比”
血色・明度・艶の三要素(まず原理)
頬の見え方は色(肌の温度に合うか)・明度(肌との明るさ差)・艶(反射)の三要素で決まります。色が肌温度に合えば白目が澄み、くすみが消え、明度差は肌±1.5トーンが安全圏。艶は面積が大きいほど下げる(半艶〜マット)と小顔に、面積が小さいときは艶+1で元気に見えます。
表:三要素×強弱と見え方(運用の要約)
| 要素 | 強めたとき | 弱めたとき | 安定運用のコツ |
|---|---|---|---|
| 色(温度) | 肌となじむ/外れる | 白目が濁る | 肌と同じ向き(黄or青)で選ぶ |
| 明度 | 若々しいが膨張 | 落ち着くが沈む | 肌±1.5トーンから開始 |
| 艶 | 立体だが面が広がる | 小顔だが平坦 | 面積大→艶を下げる、面積小→艶を足す |
位置の黄金比(座標で迷わない)
初期位置は黒目の外下1/3ライン×小鼻の延長の上。ここを中心に、耳珠と結ぶ三角形の内側で直径2.5〜3.0cmの楕円を置きます。丸顔=やや上、面長=やや横、四角=楕円を縦に、逆三角=外下に滴型が基本補正。**広げすぎは“面積の暴走”**を生み、顔が大きく見えます。
表:顔型×初期位置の微調整(+は上、−は下/mm)
| 顔型 | 縦位置 | 横位置 | 形 | ねらい |
|---|---|---|---|---|
| 丸顔 | +3〜+5 | 中央寄り | 小円→縦長楕円 | 縦を足す |
| 面長 | −3〜−5 | 外寄り | 横長楕円 | 幅を足す |
| 逆三角 | 0 | 外−3 | 滴型(外下へ流す) | 下重心で安定 |
| 四角 | +2 | 中央〜外 | 縦長楕円 | 角をぼかす |
ブラシが決める“面の形”
丸平(ドーム)=面作り/斜めカット=骨格沿い/扇=境目ぼかし。面積を小さく見せたい日は斜めカット中型(幅30〜35mm)が万能。粉はやわらか毛(灰リス調・合成やわらかめ)で薄膜に、練り・液は合成のコシ強めがムラになりにくい。粉=回転で置かない・押して滑らせるのが厚塗り回避の合言葉です。
イエベ(春・秋)の最適チーク位置×色×ブラシ
イエベ春(スプリング)——軽さと透明感を最短で出す
色:アプリコット/コーラル/ピーチ。明度:肌+0.5〜+1.0。艶:半艶。
位置:黒目外下→小鼻上のライン上、やや内寄りかつ上。直径2.5cmの小楕円を斜め上に伸ばします。
ブラシ:斜めカット中小(約30mm)。粉は細粒子、境目は扇で一撫で。
仕上げの手順(春)
- ブラシで余分を落とし小さく点置き→2) 外上へ3回ぼかす→3) 中心だけ艶+1で光を集める。
NG回避:広く塗ると幼く見える。直径3cm以内を死守。口紅が明るい日は彩度−1段に落とすと調和します。
春の細分化(瞳の対比×服色)
- 瞳の輪郭が強い人:色をやや鮮やかに(彩度+0.5段)、面積は小さく。
- 白・淡色の服:明度+0.5で写真映え、艶はそのまま。
- 黒トップス:艶+1で対比を作り、位置は+2mm上へ。
イエベ秋(オータム)——深みと引き締めで上質に
色:テラコッタ/カッパー/ベージュブラウン。明度:肌−0.5〜0。艶:低〜半艶。
位置:黒目外下より外側中心、耳珠方向へ細長く。縦は小鼻ラインより上をキープ。
ブラシ:斜めカット中型(約35mm)。粉は密着系。仕上げは境目だけ扇。
仕上げの手順(秋)
- 外→内へ細く線を引き雫型に
- 内側は面積1/2で止める
- ハイライトは頬骨上のみで面を増やさない。
NG回避:頬の中央に丸くのせると重く見える。外重心を崩さない。
秋の細分化(服の濃さ×アクセ)
- 濃色ニットの日:明度+0.5で沈み防止。艶はそのまま。
- 金色アクセ:チークは赤み+0.5滴で血色を足す。
- 銀色アクセ:赤み−0.5滴、代わりに頬骨上へ光を。
表:イエベ(春/秋)チーク早見
| タイプ | 色相 | 明度 | 艶 | 位置(中心) | ブラシ |
|---|---|---|---|---|---|
| 春 | アプリコット/ピーチ | 肌+0.5〜+1.0 | 半艶 | 黒目外下×小鼻上、内上寄り | 斜めカット中小 |
| 秋 | テラコッタ/ベージュBr | 肌−0.5〜0 | 低〜半艶 | 黒目外下より外、耳珠方向 | 斜めカット中 |
ブルベ(夏・冬)の最適チーク位置×色×ブラシ
ブルベ夏(サマー)——柔らかさと均一で清潔に
色:ローズ/ライラックピンク/モーブ。明度:肌0〜+0.5。艶:半艶。
位置:黒目外下の真下〜やや内を起点、横長楕円で広げすぎない。
ブラシ:丸平小(直径28〜30mm)で点→面へ。
仕上げの手順(夏)
- 点置き2点→2) 横へ2回ぼかす→3) 境目を扇で空気の膜にする。
NG回避:濃色・高艶は毛穴感が出やすい。半艶を守る。青みの口紅と合わせる日は**面積−20%**で上品に。
夏の細分化(肌質×照明)
- 乾燥寄り:練り→薄粉で水分膜を作る。艶はそのまま。
- 皮脂多め:粉の比率を上げ、仕上げに冷ミスト1プッシュ。
- 昼白色の照明:明度−0.5で締めると顔が引きしまる。
ブルベ冬(ウィンター)——対比とシャープさで絵になる顔
色:フューシャ薄/プラム薄/ベリー。明度:肌−0.5〜0。艶:中〜半艶。
位置:黒目外下より上、こめかみ方向へ斜めに。幅は2.5cm内で直線寄り。
ブラシ:斜めカット小(28〜30mm)。発色が強い粉は量1/3から。
仕上げの手順(冬)
- 外→内へ一筆
- 耳珠手前で止める
- 頬骨上にうっすら艶で写真に強く。
NG回避:丸く塗ると幼く見える。斜め直線を崩さない。黒・白・原色の服では明度+0.5で遠目の写りが安定。
表:ブルベ(夏/冬)チーク早見
| タイプ | 色相 | 明度 | 艶 | 位置(中心) | ブラシ |
|---|---|---|---|---|---|
| 夏 | ローズ/モーブ | 肌0〜+0.5 | 半艶 | 黒目外下の真下〜やや内、横長 | 丸平小 |
| 冬 | ベリー/プラム薄 | 肌−0.5〜0 | 中〜半艶 | 黒目外下より上、斜め外上 | 斜めカット小 |
顔型・年齢・肌質・頬肉の厚みで変える“当日補正”
顔型別(丸/面長/逆三角/四角)
丸顔は位置を**+3mm上**、形は縦長楕円、色は明度+0.5で軽さ。面長は位置を**−3mm下**、横長楕円で幅を作り、色は彩度+0.5段で元気に。逆三角は外下へ滴型、中心は黒目外側より外で下重心。四角は縦長で角を跨ぐように入れ、扇で境目をよくぼかすと骨感がやわらぎます。
年代・肌質(毛穴・乾燥・テカり)
- 10〜20代:薄づき×半艶。面積の拡大に注意。
- 30〜40代:半艶〜マットへ移行。毛穴には粉→ミスト→粉の薄膜で均一に。
- 50代〜:明度+0.5で生気、位置は+2mm上。粉は極少量で線を残さない。
- 乾燥肌:練り→薄粉で密着。日中はミスト1プッシュで復活。
- 脂性肌:皮脂防止下地→粉→冷ミスト。艶は**−1**で広がりを制御。
頬肉の厚みと骨格(面の管理)
- 厚い/下がりやすい:外上へ細長く。艶は**−1**、ハイライトは頬骨上のみ。
- 薄い/骨感:内上に小さめ円。艶は**+1でやわらげ、面積は直径2.5cm**内に。
表:当日補正のクイック表
| 条件 | 操作 | 理由 |
|---|---|---|
| 丸顔 | +3mm上/縦長 | 縦を作る |
| 面長 | −3mm下/横長 | 幅を作る |
| 毛穴目立ち | 半艶/扇で境目 | 反射を均一化 |
| 乾燥 | 練り→薄粉 | 粉感を防ぐ |
| 皮脂 | 粉比率↑→冷ミスト | 崩れ防止と面の固定 |
ブラシ選び・塗り方・手入れ・Q&A・用語辞典(運用の全部)
ブラシの選び方(毛質・形・幅)
- 粉チーク:斜めカット(30〜35mm)=骨格沿いに置ける主力。丸平(28〜30mm)=面をふわっと。扇=境目消し。
- 練り/液:合成毛の小丸で点置き→指2本でタップ。最後に扇で周囲をなでると“置いた痕”が消えます。
- 毛質:やわらか=薄膜、コシ強=発色強。迷ったら中間硬度を選ぶと失敗が少ない。
表:製品タイプ×最適ブラシとねらい
| 製品タイプ | 主役ブラシ | 補助 | ねらい |
|---|---|---|---|
| 粉 | 斜めカット中 | 扇 | 骨格に沿って面を最小化 |
| 練り | 小丸合成 | 扇 | 点から面へ、境界消し |
| 液 | 小丸合成 | 指→扇 | 透け発色で失敗が少ない |
塗り方の完全手順と当日調整
- 点置き(米粒大×片頬2点)→2) 外上へ2〜3ストローク→3) 扇で境目1往復→4) 鏡を30cm離して左右差を修正。
通勤:半艶・面積小、中心明度+0.5。
写真:明度+0.5〜+1.0、位置+2mm上、艶は髪型に合わせて±1。
屋外:艶−1、横にやや広くしてテカり防止。帽子をかぶる日は位置−2mmで影と重ねない。
ブラシの手入れ(清潔と発色安定はここで決まる)
- 毎日:使用後、ティッシュで色を抜く→軽く風を当てる。
- 週1:ぬるま湯+中性洗剤で押し洗い→タオルで水気を取る→陰干し。毛先を下向きで乾かすと根元が長持ち。
- 月1:形の復元(指で整え、紙筒で固定して一晩)。
失敗→即リカバリー集(その場で直す)
- 濃くなり過ぎた:フェイスパウダーを扇ブラシで薄く重ね、外側へぼかす。中心は触らない。
- ムラになった:ミスト1プッシュ後、丸平で軽く撫でて均一に。
- マスクで消えた:練り→粉の二層にして、中心を内上に小さく;仕上げに冷ミストで膜を作る。
- 毛穴が目立つ:半艶に落とし、扇で境目を広くぼかす。
Q&A(よくある疑問)
Q1. 色選びで迷った。 服の色より肌の温度を優先。迷ったら肌と同温度の中明度が破綻しません。
Q2. 長時間持たせたい。 粉→ミスト→粉のサンドで密着。皮脂が多い人は仕上げに冷風10秒。
Q3. ハイライトとの兼ね合いは? 頬骨上=ハイライト、頬の中心=チーク。重ねるならハイライトを先に。
Q4. 口紅や目元との関係は? 口紅が鮮やかな日はチーク彩度−1段/面積−20%。目元が強い日は明度+0.5で軽さを出す。
Q5. 仕事と休日で変えたい。 平日は半艶・面積小・明度+0.5、休日は艶+1・位置+2mm・彩度+0.5段で写真に強く。
用語辞典(やさしい言い換え)
半艶:鏡のように光り過ぎない自然なつや。
明度:色の明るさ(肌±1.5トーンが安全)。
色相(温度):黄み/青みの向き。肌と同じ向きに合わせると整う。
扇ブラシ:境目を消すための扇形のブラシ。
耳珠(じじゅ):耳の穴の前にある丸い部分。位置決めの目印に便利。
滴型(しずくがた):外下へ向かって細く流す形。顔の下重心づくりに向く。
まとめ チークは肌の温度に合う色相・肌±1.5の明度・面積に応じた艶を守り、黒目×小鼻×耳珠で作る三角内へ直径2.5〜3cmの最小面でのせ、骨格に沿うブラシで境目を消す——これだけで血色は自然、顔は小さく、写真も安定します。
服や照明が変わる日こそ、面積±20%・位置±2mm・艶±1段で当日調整。明日のひと塗りが、仕上がりの天井を上げます。

