洋服の色合わせで「色は合っているのに、なぜかパッとしない」「クローゼットの色を真似したはずなのに、他の人ほどおしゃれに見えない」「スマホで撮ると服だけ浮く」「逆に画面だと急に地味になる」といった違和感が起きるとき、原因になっていることが多いのがコントラストのずれです。
ここでいうコントラストとは、単に白と黒の差だけではなく、明るさの差(明度差)・色の強さの差(彩度差)・使う面積の差が、あなたの顔がもともと持っているコントラストと合っているかどうかを指します
。顔が柔らかくて明るい人が、白×黒や濃紺×白のような強い組み合わせを大きい面積で着ると、服だけが前に出て「服は素敵なのに、なんだか借りてきたみたい」に見えますし、逆に髪も瞳もはっきりしている人が、ベージュ×エクリュ×グレージュのような低コントラストだけにしてしまうと「今日は疲れてる?」「体調悪い?」と聞かれるくらい印象が薄くなります。
つまり、似合う色を選ぶことはゴールの半分で、残り半分はその色どうしの差を自分の顔に寄せることなのです。
さらにややこしいのは、パーソナルカラーの「春・夏・秋・冬」という分類が、そのまま一律のコントラストではないという点です。同じスプリングでも、髪がしっかり暗めの人と、髪も瞳も明るく柔らかい人とでは、似合うコントラストの幅が違います。
ウィンターでも、黒髪・黒目・白めの肌で強いコントラストを持っている人と、髪が暗めでも瞳がやや柔らかくて肌に黄みがある人とでは、服に求める差は少し変わります。ですからこの記事では、まず「顔がどのくらいの差を持っているのか」を自分で見つける方法を説明し、そのうえで春夏秋冬それぞれに、低め・標準・高めの三段階のコントラストを用意します。
そこへさらに、通勤・休日・行事・オンライン・写真撮影といった実際の場面での使い分けを重ね、最後にQ&Aと用語辞典で補足する構成にしました。ここまで読んでおけば、色を増やさなくても、手持ちの服の“差”を変えるだけで印象を大きく動かせるようになります。
コントラスト比を知るための基本の見方と測り方を丁寧に
最初のステップは、服ではなく顔を見ることです。髪・眉・瞳・肌・唇をじっと見て、どこが一番暗くてどこが一番明るいかを判断します。多くの人は鏡を見るとき、顔全体を「明るいか暗いか」だけで見ていますが、ここでは部分で見ます。髪と眉の差はどうか。
眉と瞳の輪郭はどうか。瞳と肌の差はどうか。肌と唇の差はどうか。たとえば、髪がこげ茶〜黒で、眉もしっかりしていて、瞳の縁が太く、肌は明るい人は、もともとの顔の中に白と黒のコントラストがはっきりあります。
反対に、髪がやわらかい茶・眉も淡くて輪郭がやさしく・瞳がガラス玉のようで・肌もやや明るい人は、顔の中に急な差がほとんどありません。後者の人が、白と黒の強い差を服で作ると、顔と服の世界が二つに割れてしまうのです。
顔を見るときのコツは、色の影響をいったん消してから見ることです。スマホのカメラで自分の顔を撮影して、白黒(モノクロ)にして見ると、いちばん濃く写っている場所と、いちばん明るく飛んでいる場所が分かります。
ここで濃淡がくっきり出る人は高コントラスト、全体がふんわり均一に写る人は低コントラスト、その間にいる人が中コントラストです。鏡で見るだけでは分かりにくい人は、この方法を使うと一瞬で把握できます。撮影するときは、昼間の自然光で、白い壁の前で、帽子やカラフルなトップスを外して撮ると精度が上がります。
次に考えたいのが、明度差・彩度差・面積という三つの観点です。明度差は、白にどれくらい近いか・黒にどれくらい近いかという差です。彩度差は、くすんでいるか・鮮やかかという差です。面積は、明るい色と暗い色のどちらを大きく使うかという量の話です。
コントラストが低い顔は、この三つすべてを小さくしておくと一番きれいです。明るい色を大きく、暗い色を小さく、色の強さも近いものにしておくと、顔の持っている世界観のまま服が乗ります。コントラストが高い顔は、三つのうち最低でも一つは差をつけておかないと、顔だけが目立ってしまいます。
たとえば、明度差で強くする(白×黒、白×濃紺など)、彩度差で強くする(真っ赤×ネイビー、ロイヤルブルー×白など)、面積で強くする(暗い色を広く・明るい色を狭く)といったやり方です。
ここまでで、自分がだいたいどのゾーンにいるかが分かったら、「標準コントラスト」をひとつ決めておくと便利です。鏡の前で、白い紙と黒い布を交互に当ててみて、より生き生き見えるほうを標準にします。白のときに顔のパーツがきれいに見えるなら、標準は低〜中。黒のときに目や唇がシャープに見えるなら、標準は中〜高。ここを決めてしまえば、服選びで「今日は少し強くしたいから標準+1段」「今日は柔らかくしたいから標準−1段」と、上下に動かすだけで済むようになります。
最後に、顔と服のコントラストの対応をもう一度整理しておきます。
| 顔の印象・骨組み | 顔のコントラスト | 合わせるときの服のコントラスト | 覚えておきたいこと |
|---|---|---|---|
| 髪も瞳も淡く、肌が明るい。輪郭もやわらかい | 低 | 明るい同系色どうしで差を小さく、暗い色は小物のみ | 上半身を必ず明るく、白に寄せると安定する |
| 髪か瞳のどちらかがくっきりしている。肌は明るめ | 中 | 明るい色+やや暗い色の中くらいの差。中間色を一色挟む | 通勤や行事ではこの幅に寄せると無難 |
| 髪も瞳も濃く、肌との明暗がはっきりしている | 高 | 明るい色+暗い色で差をしっかり。面積も暗い側を増やす | オンラインや写真では一段だけ落としてもよい |
パーソナルカラー別に見る標準コントラスト・高低の幅・陥りやすいNGを詳細化
ここからは、四つのパーソナルカラーごとに、①そのタイプが本来持っている色の質、②そこから想定できる標準のコントラスト、③あえて上げたいとき・下げたいときのやり方、④よくある失敗、の順で書いていきます。
同じシーズンでも髪色や瞳の色、年齢、好み、住んでいる地域の日差しによって見え方は変わるので、ここで書くのは「この方向に寄せると整えやすい」という通り道だと思ってください。
スプリングタイプのコントラストを細かく見る
スプリングは、肌に黄みのあたたかさがあり、瞳も髪もどこかで光を含んでいる人が多いタイプです。ですから、標準は低〜中コントラストで、明るさをそろえたままほんの少しだけ濃くするという作り方がいちばん素直です。たとえば、アイボリーのブラウスにミルクティー色のパンツ、キャメルの靴、ベージュのバッグ。
この程度の差でも、顔が明るく・血色よく見えます。ここでいきなり黒のパンツにしてしまうと、スプリングが持っている軽さが消えてしまいます。どうしても黒・ネイビー・チャコールなど暗い色を使いたい日は、面積を小さくし、顔から遠いところに置きます。
つまり、靴・バッグ・ベルト・メガネのフレームなどです。首まわりには必ず、アイボリー・クリーム・白に黄みを1滴足したような色を戻しておくと、スプリングらしさが維持できます。
スプリングがやってしまいがちなのは、白×黒や白×濃紺といったいかにもオフィスな高コントラストを大きく着ることです。これらの色自体は悪くありませんが、面積が多いと顔が沈んで見えます。そういう日には、ベージュのベルトを挟む、靴をキャメルにする、首もとにコーラル系のアクセサリーを加えるなどして、一段だけコントラストを丸くしてください。
サマータイプのコントラストを細かく見る
サマーは、肌がやわらかく、血色がほんのりと上に乗り、目や髪も黒すぎない人が多いので、標準は低寄りの中コントラストになります。つまり、明るい色どうしを合わせつつも、どこかで冷たさを感じる色を一枚挟んでおくと、一気にサマーらしくなります。
ライラックのブラウスにブルーグレーのパンツ、ネイビーのバッグ。あるいは、ローズベージュのトップスにチャコールのスカート、グレーのジャケット。これらの組み合わせは、どれも白と黒のような極端な差ではありませんが、冷たい方向に揃っているので、サマーの肌とよくなじみます。
サマーが苦手とするのは、黄みを強く含んだベージュと黒の高コントラストです。黄みのベージュは春・秋の温度感を持っているので、サマーの冷たさとぶつかります。
黒もサマーにとってはやや強すぎるので、この二つを合わせると、一気に冬っぽい・あるいは秋っぽい印象になってしまいます。どうしても黒を使う日には、間にラベンダー・グレージュ・スモーキーピンクといった中間の冷たい色を一段だけ挟んでください。これでコントラストがなめらかになります。
オータムタイプのコントラストを細かく見る
オータムは、深くてあたたかい色が似合い、肌もやや黄み寄りで、瞳がこげ茶〜黒寄りの人が多いので、中〜高コントラストがもともと得意です。ただしここが重要なのですが、オータムが得意なのは「温かい高コントラスト」であって「冷たい高コントラスト」ではありません。
生成り×こげ茶、エクリュ×キャメル、オリーブ×モカ、マスタード×こげ茶など、どちらも黄みを含んだ濃淡でコントラストをつけると、オータムの肌が一番美しく見えます。ここでうっかり白×黒や白×真紺のような冷たい差を使うと、顔だけが黄ばんで見えたり、肌の影が濃く見えたりするので注意が必要です。
オータムが陥りやすい失敗として、全部を中明度でまとめてしまうというものがあります。ベージュ×カーキ×ブラウンをすべて「中くらい」で揃えてしまうと、色は合っているのに、主役と脇役が分からなくなります。
これを避けるには、トップスをやや明るく、ボトムをしっかり濃く、靴とバッグでさらに締める、という三段を意識してください。こうすれば、オータムの深みを残したまま、写真で見ても立体的です。
ウィンタータイプのコントラストを細かく見る
ウィンターは、黒・真っ白・ロイヤルブルー・パープル・マゼンタといった鮮やかで冷たい色が似合い、髪も瞳も暗く、肌との明暗が大きい人が多いので、標準ははっきりした高コントラストになります。
白シャツに黒パンツ、白ブラウスにネイビースカート、白にチャコール、どれを着ても顔が負けません。むしろ、これくらい差をつけておいたほうが、ウィンター特有の透明感や都会的な印象が引き立ちます。
とはいえ、ウィンターでも常に最大コントラストにしていると、職場やオンラインでは「やや強い」「威圧感がある」と感じられることがあります。そういうときは、黒をチャコールに、白をオフ白やアイシーグレーに、ネイビーをスレートブルーにと、すべてを一段ずつだけ落とします。
これで高コントラストのまま、角が少し丸くなります。また、冬タイプがベージュやキャメルをどうしても使いたい日は、トップスとボトムのどちらかをウィンターらしい冷たい色にしておき、ベージュは面積を小さくするか、バッグ・靴などの付属にとどめると、ミスマッチ感が出にくくなります。
ここまでの内容を四つのタイプで比較できるように、もう一度表にまとめます。
| タイプ | 標準コントラスト | 上げたいときの動かし方 | 下げたいときの動かし方 | よくあるNG |
|---|---|---|---|---|
| スプリング | 低〜中(明るく黄みのある同系) | 濃い色を小面積で足し、首もとは必ず明るく | 全身を明るくし、暗い色は靴かバッグで少量 | 白×黒を大面積で着る |
| サマー | 低寄り中(冷たくやわらかな同系) | ネイビーやチャコールを中間色経由で足す | ミスト系+グレーで全体を淡く | 黄みベージュ×黒で急に温度を変える |
| オータム | 中〜高(温かい濃淡) | 生成り×こげ茶などで明暗をはっきり | すべてを中明度に寄せてやわらげる | すべて中明度でのっぺりさせる |
| ウィンター | 高(冷たい明暗・鮮やか) | 白×黒×鮮やかを大きめに、金属で光を足す | 白をアイシーに、黒をチャコールに落とす | ベージュ系だけで完結させる |
アイテム別にコントラストを作る手順と、失敗しないための細部
コントラストは「トップスの色とボトムの色」だけで決まるように思われがちですが、実際には、アウター・インナー・ベルト・バッグ・靴・アクセサリー・メイクが全部合わせてひとつのコントラストを作ります。どこか一つだけを変えれば全体が調整できるので、ここではアイテム別に段階の作り方を整理しておきます。
トップス×ボトムで明度差を作る基本パターン
一番分かりやすく、誰でもすぐに試せるのが、トップスを自分のシーズンに最も合う明るさにし、ボトムで一段または二段沈める方法です。スプリングなら、アイボリーのブラウスにライトキャメルのパンツ。サマーなら、ライラックのニットにネイビーのフレアスカート。
オータムなら、エクリュのニットにこげ茶のストレートパンツ。ウィンターなら、白シャツに黒のテーパードパンツ。これらはすべて「顔の近くを一番得意な明るさにする」という共通点があります。この共通点を外さないかぎり、ボトムでどれだけ差をつけても、顔が沈むことはありません。
ここで失敗しがちなのが、「トップスを一段暗くしたのに、ボトムはさらに暗くしてしまう」ケースです。顔の近くが暗いと、いくらボトムで差をつけても顔が明るく見えません。顔から遠いほうを暗くする。これが鉄則です。
アウターで中間色をはさみ、急な差をなめらかにする
トップスとボトムの差が大きすぎて「服だけが目立つ」「色のきつい人だと思われそう」と感じたときは、アウターで中間を作ります。サマーの白×ネイビーにはブルーグレーのジャケット、オータムの生成り×こげ茶にはキャメルのコート、スプリングのアイボリー×ネイビーにはベージュのトレンチ、ウィンターの白×黒にはチャコールのチェスター。アウターで中間を作ると、移動中・室内・オンラインのどの場面でもバランスがとりやすくなりますし、脱いだときにも「標準コントラスト」に戻せるので便利です。
小物で一段上げる/一段下げる
コントラストを服だけで決めてしまうと、場面が変わったときに調整ができません。そこで、バッグ・靴・ベルト・スカーフ・帽子で最後の一段を決めるようにします。たとえば、スプリングがアイボリー×ベージュで組んだ日、ややぼやけると感じたら、靴をキャメルに、バッグをこげ茶にして一段上げます。
サマーがライラック×グレーで組んだ日、顔が少し青白く見えたら、バッグを淡いグレージュにして一段下げます。オータムが生成り×キャメルでまとめた日、のっぺりしたと感じたら、ベルトだけを黒に寄ったこげ茶にして締めます。ウィンターが白×黒で強すぎると感じたら、バッグをチャコールにして一段だけやわらげます。小物は面積が小さいので失敗しづらく、気分に合わせて上下しやすいのが利点です。
次の表で、アイテムごとの操作をまとめておきます。
| 操作する場所 | コントラストを上げるときの選び方 | コントラストを下げるときの選び方 | 覚えておきたい細部 |
|---|---|---|---|
| トップス | 白・アイボリー・得意なパステルにして顔を明るく | 中間色(グレージュ・ブルーグレー・サンド)で曖昧に | 首まわりを明るくしておけば他が多少強くても大丈夫 |
| ボトム | 黒・ネイビー・こげ茶など暗色を使う | トップスに近いベージュ・グレーで揃える | 低身長の人は極端な差ならヒールで重心を上げる |
| アウター | トップスとボトムの間より濃い色にする | トップスとボトムの間より明るい色にする | 室内で脱ぐことを前提に、元のコントラストも想定 |
| バッグ・靴 | 白・黒・こげ茶・鮮やかなど“点で目立つ”色 | 服と同じ明るさの中間色・くすみ色 | バッグと靴で同じ段にすると安定する |
| アクセサリー | シルバー・白パール・透明で光を増やす | マットゴールド・木・革で光をやわらげる | オンラインでは光るものを一つ入れると顔が沈まない |
シーン別・季節別にコントラストをどう動かすかの実例拡張
同じ人でも、行く場所や季節によってちょうどいいコントラストは変わります。オフィスとカフェでは求められる見え方が違いますし、真夏の直射日光と冬の室内照明では、同じ色でも見え方が違います。ここでは、通勤・休日・行事・オンライン・写真撮影の五つの場面を基準に、四つのシーズンすべてで「このくらいなら失敗しない」という配分を示しておきます。
通勤・職場でのコントラスト
職場では、あまりにも強いコントラストは「主張が強い」「話しかけづらい」と受け取られやすいため、各シーズンとも標準〜標準よりほんの少し低めに寄せるのが安全です。スプリングなら、アイボリーのブラウスにライトキャメルのパンツ、ベージュのバッグ、靴だけこげ茶で軽く締める。
サマーなら、オフ白のブラウスにブルーグレーのパンツ、ネイビーのジャケット、靴もネイビーかグレー。オータムなら、生成りのニットにキャメルのスカート、こげ茶のベルト、モカのバッグ。ウィンターなら、白シャツにチャコールのパンツ、黒のジャケット、バッグだけ白にして軽く。どのシーズンでも、顔まわりだけは自分の得意な色で明るくしておけば、多少ボトムを濃くしてもきれいに見えます。
休日・おでかけでのコントラスト
休日は光が強く、背景も木・カフェの壁・ショッピングモールの白など変化があるので、通勤より一段だけ下げると周囲になじみます。スプリングなら、クリーム×ベージュ×キャメルでやわらかく。サマーなら、ライラック×ラベンダー×グレーで淡く。
オータムなら、エクリュ×オリーブ×こげ茶で落ち着きを出しつつ柔らかく。ウィンターなら、白×グレー×黒で都会的に。もし外で写真を撮る予定があるなら、中間の色をほんの少し濃くしておくと、スマホでも色が飛びません。
行事・写真撮影でのコントラスト
入学式・卒業式・七五三・発表会のように、背景が明るい場所で写真を撮る日は、顔より一段だけコントラストを上げておくと、写真で沈みません。スプリングなら、白に近いアイボリーのワンピースにキャメルのバッグと靴。サマーなら、淡いラベンダーのトップスにネイビーのスカート、シルバーのアクセサリーで光を足す。
オータムなら、生成りのセットアップにこげ茶のバッグと靴で明暗をつける。ウィンターなら、白ブラウスに黒のスカート、シルバーかクリアのアクセサリーでさらにコントラストを増やす。背景が白いほど、中間を濃く・終点をはっきりさせると写りが良くなります。
オンライン・リモートでのコントラスト
オンライン会議では、カメラが色を均一にしてしまうので、現実よりもコントラストが控えめに見えます。そこで、顔の近くに自分のシーズンに一番合う色を着て、その下に一段沈めた色、背景に写るクッションや小物で最後の一段を作ると、画面に奥行きが出ます。
スプリングなら、クリームベージュのニットにアプリコットのカーディガン、後ろにキャメルの小物。サマーなら、ライラックのブラウスにブルーグレーのカーディガン、後ろにグレーの額縁。オータムなら、エクリュのトップスにキャメルのジャケット、背後に木の色。ウィンターなら、白のトップスにチャコールのカーディガン、後ろに黒かネイビーの小物。背景もコントラストの一部と考えると、画面上での「きつさ」や「ぼやけ」が調整しやすくなります。
季節光での見え方の差
春と夏は日差しが強く、写真を撮ると明るい色が飛びやすいので、起点をほんの少しだけ濃くしておくと安心です。秋と冬は光が弱く、室内で撮ることが増えるので、逆に起点を明るく・終点で沈めるときれいに写ります。春夏にロングのワンピースを着るときは、トップスを短め・色をやや濃く。秋冬にロングコートを着るときは、インナーを上下で近い色にして、コートで三段目を作るとバランスがとりやすいです。
このようにシーン別に見ていくと、実はどのタイプも「標準」「+1段」「−1段」の三つだけでほぼ回せることが分かります。クローゼットの中にこの三段がそろっているかを見直すと、服を増やさなくても印象が変えられます。
Q&Aと用語辞典を拡張しておく
ここまでで基本の考え方とパターンは出揃ったので、最後に現場でよく出る疑問にまとめて答えます。どれも、色の数を増やさずにコントラストだけで調整するための考え方です。
Q1. パーソナルカラーがはっきり分からなくてもコントラストだけできれいに見せられますか。
見せられます。白と黒を顔の下に当ててみて、どちらか一方で目・眉・口がくっきりするかを確認してください。白でくっきりするなら低〜中コントラストが得意、黒でくっきりするなら中〜高コントラストが得意です。そこに、普段よく褒められる色を足し、明るい色で褒められるなら低め、濃い色で褒められるなら高め、と決めれば、シーズンが曖昧でも動かせます。
Q2. コントラストを下げると老けて見えるのはなぜですか。
もともと顔の中にしっかりした差がある人がコントラストを下げると、輪郭・目・鼻・口の情報が服の明るさに飲まれてしまいます。これを防ぐには、服を柔らかくすると同時に、顔まわりに光を足すことです。首もとに白を1〜2cmのぞかせる、耳に白やシルバーのアクセサリーを付ける、髪をまとめて首を見せる、リップを顔に合う色でしっかり塗るなど、光源をつくると、低コントラストでも若々しく見えます。
Q3. 黒を大きく使いたいのですが、重くなります。
黒はそれだけで明度差を最大にする色なので、面積が大きいとどのタイプでもコントラストが上がります。重いと感じたら、黒をボトムに寄せてトップスを明るくする、黒のあいだにグレーやキャメルを挟んでやわらげる、バッグや靴を白・アイボリー・シルバーにして抜点を作る、といった方法で一段下げてください。黒の代わりにこげ茶やチャコールを使うだけでも、ぐっと柔らかくなります。
Q4. 柄物を入れてもコントラストは保てますか。
保てます。ただし、柄の中に「起点の色」と「つなぎの色」が両方入っているものを選んでください。サマーならライラックとグレーが入ったチェック、オータムならエクリュとキャメルが入ったストライプ、スプリングならアイボリーとコーラルが入った小花、ウィンターなら白とグレーが入った幾何学。柄がこの二色を橋渡ししてくれるので、他のアイテムを無地にしてもコントラストの段がわかります。
Q5. オンライン会議でだけ顔が沈むのはなぜですか。
カメラが背景の白や壁の色を基準に明るさを調整するため、服や顔のコントラストが一段薄く写るからです。ですから、オンラインのときだけは起点の色を半歩濃く、もしくはアクセサリーで光を足してください。白の面積が大きい服を着るときは、背景の白と一体化しないように、ジャケットかカーディガンで中間色を一段入れると、顔がはっきりします。
Q6. 家族や友人と写るときにだけ浮くのはどうすればいいですか。
一緒に写る人があなたよりも高コントラストか低コントラストかのどちらかです。あなたのコントラストを大きく変えるのではなく、スカーフ・バッグ・アクセサリーで相手の段に一段寄せてください。たとえばオータムのあなたがサマーの家族と写るなら、あなたのコントラストを一段だけ下げてグレージュを足す。ウィンターのあなたがスプリングの友人と写るなら、あなたのコントラストを一段だけ下げてベージュを少し入れる。これだけで並んだときの違和感が消えます。
Q7. メイクのコントラストはどう合わせるといいですか。
服のコントラストと同じ段にしておくと自然です。スプリングで低コントラストの日は、コーラルやアプリコットに薄ブラウンのアイライン。サマーで中コントラストの日は、ローズやモーブにグレー系のアイライン。オータムで高めにした日には、テラコッタやブリックにブラウンのアイライン。ウィンターで高コントラストの日には、青みレッドやプラムに黒のアイライン。リップが服より強すぎると、せっかく整えたコントラストが崩れるので、服に合わせて半歩だけ濃くする感覚で揃えてください。
用語辞典(やさしい言い換え)
コントラスト比:明るい色と暗い色、強い色と柔らかい色の差。服どうしの差だけでなく、顔と服の差も含めた考え方。これが合っていると「似合う」と感じやすい。
明度差:白に近いか、黒に近いかという明るさの差。これを大きくすると、シャープで写真映えする。小さくすると、ふんわり・やさしい印象になる。
彩度差:色の鮮やかさの差。鮮やかな赤とくすんだピンクのような差。これを大きくすると元気・華やか、小さくすると落ち着き・上品になる。
面積バランス:明るい色と暗い色をどれくらいの割合で使うか。暗い色を広くすると引き締まり、明るい色を広くすると軽く見える。
標準コントラスト:自分の顔が一番自然で、周りからも褒められやすいコントラスト。ここを基準にして上げ下げする。
中間色:二つの色の間をつなぐための色。グレー、ベージュ、グレージュ、ピンクベージュ、ブルーグレーなど。これを一枚挟むとコントラストがなめらかになる。
起点色:顔のすぐ近くに置く、一番似合う色。ここを外すとどんなにコントラストを工夫しても違和感が残る。
終点色:最後に置く一番暗い色、または一番明るい色。靴やバッグでつくることが多い。ここが決まるとコーディネートが締まる。
背景を含めたコントラスト:オンラインや写真で、後ろに写る壁や家具も一段として扱う考え方。背景が白なら中間を濃く、背景が暗いなら起点を明るくして調整する。

