「就職・転職の面接は白シャツで」——この言葉は誰もが一度は聞いたことがあります。けれど、実際にその“白シャツ”を着て面接室のいすに座ると、「鏡で見たより顔が青白い」「コンシーラーで消したはずのクマがなぜか強く出ている」「ネイビーのスーツは似合うはずなのに、顔だけ浮いて見える」といった違和感が起きます。
これは、面接室の光の色(蛍光灯・昼白色・自然光の混在)と、あなたの肌の色(パーソナルカラー)、さらに選んだシャツの白さ・生成り具合・細いアクセントカラーがわずかにズレているからです。白は無難だと思われがちですが、実際の白は青白いもの・まろやかなもの・やや黄みがあるものと幅が広く、肌との組み合わせで印象は大きく変わります。
だからこそ、面接のように「短時間で」「机をはさんだ一定距離で」「複数の面接官に」見られる場では、白を“なんとなく”ではなく、自分のタイプに沿って選んでおくことが大きな差になります。
結論はシンプルです。①春夏秋冬のベース別に許容される白さの幅を決める、②女性が使えるネクタイ・スカーフ・ボウを“線で”少量だけ足し、自分の得意色に近づける、③スーツの濃さと髪色・メイクの明るさをセットで見てコントラストを整える。この3つを押さえておくだけで、同じ白シャツでも「今日は調子がいい」「夕方の二次面接でも疲れて見えない」「オンラインで背景が白でも顔が消えない」という状態を安定して再現できます。
この記事では、まず面接室という特殊な環境でなぜ色がズレるのかを原理から説明し、次にタイプ別に“安全な白・じゅうぶんに似合う白・避けたい白”をはっきり示し、そのうえで女性ならではの小さな色の足し方、業界や季節、対面・オンラインの違いまで立体的に解説します。最後にQ&Aと用語辞典も入れておくので、面接当日の朝に見返すチェックリストとしても使えます。
面接で“見え方”がずれる理由とパーソナルカラーで整える考え方
面接の場面は、普段の通勤・外出・自宅の鏡と違い、光源・距離・視線の高さ・背景色がほぼ固定されています。面接官はあなたを正面やや斜めから見ますが、ほとんどの場合は卓上の白〜グレーの机・白い壁・パーティションが背景に入り込みます。つまり、あなたの顔・シャツ・スーツの色がすべて、白〜グレーの基準に対してどう見えるかで評価されやすいのです。
面接室の光と距離が家庭と違う
家庭の洗面所やクローゼット前の鏡は、たいてい暖色寄りの電球色が近距離で当たります。ところが面接室は、天井の蛍光灯かダウンライトが真上やや前から落ちてくるため、顔の上部(額・目の下)に影がたまりやすく、首から下は白っぽく飛びやすいという逆転が起きます。
そこに真っ白なシャツが来ると、光を強く返してしまい、顔のくすみ・クマ・ファンデの色ムラが相対的に目立ちます。ブルーベースであればまだしも、イエローベースの人は首〜胸元だけ黄色く、顔と区別されて見えることもあります。距離も問題で、机をはさんだ1〜1.2mの距離は、肌の質感もシャツの“白の質感”も見えやすく、「あ、ちょっとくすんでる」「ちょっと黄ばんでる」を拾いやすくなります。
「白一択」でも色温度の幅がある
就活のマナー本で言う「白シャツ」は、印刷物としては1種類に見えますが、現実には青白くクリーンな白、蛍光灯下でやや紙のように見える白、少しだけベージュがかった白など何段階もあります。
パーソナルカラーでいうと、ブルーベースは青の方向へ1〜2度寄せた白のほうが顔色が冴え、イエローベースは少しだけ黄の方向に寄せることで肌とシャツが1枚につながって見えます。つまり「白だからOK」ではなく、「どの白までがOKか」を持っておくと、店頭でもオンラインでも迷いません。
女性のネクタイ・スカーフは“面でなく線で”見せる
女性が面接で色を足すときに一番の失敗パターンは、“面積が大きすぎること”です。スカーフを外にふんわり出したり、大柄のものを首にぐるりと巻いたり、リボンを大きく作ると、どうしてもおしゃれ>ビジネスに寄り、職種によっては“服飾・販売志望の人”のように見えてしまいます。
そこで本記事では、パーソナルカラーを面接に持ち込むときは線で色を足すことを基本にします。襟の中に収まる細スカーフ、結び目を小さくしたボウタイ、細いネクタイをジャケットの中に落とし込む、といった方法なら、色が“におう”程度で止まり、相手に違和感を与えません。
表:光環境×白さのより詳しい目安
| 環境/時間帯 | おすすめ白さ | 備考 | 代替策 |
|---|---|---|---|
| 蛍光灯のみの会議室(午前) | やや生成り〜ナチュラル白 | 黄ぐすみを和らげ、顔と首を一体に見せる | 濃色ジャケットで輪郭を締める |
| 蛍光灯+窓から自然光(昼) | 標準の白〜やや青白い白 | 顔色を明るく見せたいときに使う | チークを控えめにし首の色と合わせる |
| 夕方の二次面接・オンライン | 影が出るので明るめの白 | 画面越しでも沈まない | ネクタイ/スカーフをマットで明るく |
| 照度が低い応接室 | 白をやや青寄せ | くすみを飛ばす | メイクを少し足してもビジネス内 |
パーソナルカラー別|シャツの白さ・生成り・ストライプの選び方の深掘り
ここからは春・夏・秋・冬の4タイプごとに、実際の売り場でどう選べばいいか、候補をどう絞るかを詳しく見ていきます。どのタイプも「面接に出せる白の幅」「似合うけどやや個性が出る白」「避けたほうがいい白」を持っておくと、すばやく判断できます。
イエベ春(スプリング)に似合う面接シャツの考え方
イエベ春は肌にあたたかさと透明感があり、血色も出やすいので、実は面接向きのタイプです。ただし、青みが強い真っ白を着てしまうと、そのあたたかさが一気に冷えて見え、ほほの色がオレンジ寄りに傾いて見えることがあります。そこで、安全圏としてはナチュラル白〜ごく薄い生成りを中心に考えます。
このくらいの白さであれば、蛍光灯下でも肌がくすまず、逆光のオンライン面接でもほどよく輪郭が残ります。素材はパリッとしすぎないもの、光が面でビカッと反射しないものが◎。綿100%のブロードでも、糸が細すぎて光沢が出るものより、ややマットな質感のほうが顔になじみます。ストライプを入れたい場合は、白×ベージュ、白×サーモンのように黄みをほんの少し足した配色なら、面接でも違和感がありません。
ブルベ夏(サマー)に似合う面接シャツの考え方
ブルベ夏は、肌に青みがあり、やさしい・落ち着いた印象を与えやすいタイプです。面接ではその“落ち着き”が評価されやすい一方で、照明が黄寄りだったときに顔色が薄く見える・血色がないように見えるという問題が起きやすいです。そこでクリーンな真っ白〜わずかに青白い白を軸に、黄みの少ない素材を選ぶと安定します。
たとえば白×グレー、白×ブルーグレーの細ストライプは、清潔感を損なわず、顔まわりに冷たさを保ったまま華美になりません。どうしても夕方にくすむ会場であれば、ほほにほんのり青みピンクを仕込んでおき、シャツ側はスッキリした白を選ぶと、面接官の視線は顔に集まりやすくなります。
イエベ秋(オータム)に似合う面接シャツの考え方
イエベ秋は、ベージュ・キャメル・テラコッタなど落ち着いたあたたかい色が得意ですが、就転職の面接はどうしても「白×濃色スーツ」の世界に寄ります。ここで真っ白を着ると、良くも悪くも“制服”に見え、持ち前の大人っぽさが消えてしまいます。そこで、オフホワイト〜エクリュ系を許容するのがポイントです。
黄みが強すぎると「生成りの普段着」に寄ってしまいますが、ほんのり黄みを感じる程度なら落ち着いて見え、肌との段差も出ません。ストライプは白×ベージュのごく細いものか、白×モカのように黄みのある中間色で入れると、衣装全体が高見えします。素材は、あまりに薄いと下に着たインナーの段差が拾われてしまうので、ある程度の厚み・織りの表情・マットさを重視します。
ブルベ冬(ウィンター)に似合う面接シャツの考え方
ブルベ冬は、もともとクールでコントラストのある表情が得意なタイプです。面接でもこの強みは活かしたほうがいいので、迷ったら純白・青白い白・光沢の少ないパリッとした白を選びます。生成りやグレーがかった白は、顔の冴えを落としてしまうので原則避けます。
スーツが黒・チャコール・ネイビーなどの濃色であっても、純白のシャツなら「意図して選んでいる」ように見え、きちんと感が前に出ます。ストライプを選ぶなら、白×ネイビー、白×チャコールのように明暗差がはっきりしたものにすると、首もとがぼやけません。
表:タイプ別・面接シャツの適正(拡張版)
| タイプ | 面接で安全な白 | “似合う寄せ”で使える白 | ストライプ推奨 | 避けたいもの | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| イエベ春 | ナチュラル白 | ごく薄い生成り | 白×ベージュ/白×サーモン | 真っ青な白・ギラつく白 | 柔らかい素材で面を出しすぎない |
| ブルベ夏 | クリーン白/やや青白 | ラベンダー味のごく淡い白 | 白×グレー/白×ブルーグレー | 黄みの強い生成り | 夕方面接は頬に血色を足しておく |
| イエベ秋 | オフ白・エクリュ | 生成り寄りナチュラル白 | 白×ベージュ細/白×モカ | ペラペラに薄い真っ白 | 厚みとマットを優先して高見えに |
| ブルベ冬 | 純白・青白い白 | パリッとした白 | 白×ネイビー/白×チャコール | くすんだ生成り・グレー白 | 濃色スーツとのコントラストで勝負 |
女性が面接で使えるネクタイ・スカーフ・ボウの色と形をタイプ別に
面接で色を足すときは、必ず「どこまでがビジネスの範囲か」「どの業界が相手か」「どの季節か」を頭に置いたうえで、自分のタイプに一番近い色を“細く・小さく”足すことを意識します。ここを外さなければ、パーソナルカラーを面接に持ち込んでも“マナーを知らない”とは思われません。
基本は“線で1色”を足す
大判スカーフやリボンタイを大きく結ぶと、どうしても目立ちます。面接はあなたの話す内容や経歴が主役なので、色は脇役に回します。襟の中に縦に落ちる細いスカーフ、小さく結んで見える部分を最小限にしたボウタイ、もしくは無地で細めのネクタイをしっかりとジャケットの中に納める形。
これらはどれも、色が“点や線”で見えるので、似合う色を足しつつも、面接の緊張感を壊しません。
タイプ別に「足しても大丈夫な色」
イエベ春はコーラル・サーモン・アプリコットベージュ。これらは蛍光灯下でも血色が良く見え、優しい印象になるので、教育や医療、サービス志望の女性には特に向きます。ブルベ夏はラベンダー・ダスティローズ・ブルーグレー。白シャツと合わせると柔らかい知的さが出るので、事務・人事・企画など落ち着いた職種でも浮きません。
イエベ秋はテラコッタ・モカベージュ・オリーブ寄りベージュ。深みのある色を細く足すと、年齢に合った落ち着きが出て、キャリア採用・再就職にも合います。ブルベ冬はワイン・ネイビー・深いチェリーレッド。濃色スーツとの組み合わせでも負けず、「この人は自分で選んでいる」と伝えられます。
スーツの色とネクタイ/スカーフの組み合わせをもう一歩具体的に
黒・チャコール・濃ネイビーのスーツは最も選ばれやすいですが、その分“みんな同じ”になりがちです。ここにコーラルやラベンダーをごく細く入れるだけで、顔まわりに個性が出て、採用側も覚えやすくなります。ベージュやライトグレーの柔らかいスーツを選ぶ場合は、アクセント色も柔らかくして、白の分量を6〜7割に見せると清潔です。
表:スーツ色×おすすめアクセント色
| スーツの色 | 春(イエベ春) | 夏(ブルベ夏) | 秋(イエベ秋) | 冬(ブルベ冬) | ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| ネイビー | コーラル細・サーモン | ラベンダー細 | テラコッタ細 | ワイン/ネイビー濃 | ネイビーが強いので色は細く |
| チャコール | アプリコット/ベージュ | ダスティローズ | モカ・オリーブベージュ | 深い赤・ボルドー | 顔が暗くならないよう白シャツを明るく |
| 黒 | ピーチベージュ | ブルーグレー | オリーブベージュ | 純白/ワイン | 黒スーツは襟元の白で清潔感を出す |
| ライトグレー | サーモン・コーラル | グレイッシュピンク | キャメル薄 | ネイビー細 | 春夏の面接に向く |
| ベージュ | コーラル/サーモン | グレイッシュピンク | キャメル/モカ | ネイビー細 | イエベが最も安定 |
業界・職種・季節での微調整(対面・オンライン・夕方面接まで)
面接と一口に言っても、コーポレートの一次面接と、福祉施設の現場責任者との面接、ベンチャーのオンラインカジュアル面談では“許される色の幅”が変わります。ここでは「どこまで色を出してよいか」「どうすれば無難に寄せられるか」をまとめます。
コーポレート・金融・公的機関
最も保守性が高い領域です。ここでは白の幅を狭くするのが基本です。イエベでもあまり黄みに寄せず、ナチュラル白の範囲にとどめます。ネクタイ・スカーフはスーツと同色系にし、柄はほぼなし。面接官との距離が短く、照明も均一なことが多いので、肌とシャツのトーン差がきれいに見えているかを優先します。
どうしても色を足したい場合は、ピンバッジ代わりにごく細いスカーフを内側にしまい、外からほぼ見えない程度にとどめます。
教育・医療・福祉・サービス
清潔感と親しみやすさが評価されやすいので、イエベ春・ブルベ夏の人は黄ぐすみしない淡色を1色だけ足すほうが、相手にとって話しかけやすく見えます。スカーフをジャケットの中にしまい、白の分量を6〜7割に見せると、子どもや高齢者とも接しやすい印象になります。イエベ秋でも、オフ白〜エクリュのシャツにモカ系の細リボンを合わせると、柔らかく見えて好印象です。
クリエイティブ・IT・ベンチャー
この領域はやや自由度が高く、ラベンダーやブルーグレー、テラコッタなど“自分の色”を見せたほうが「自分で選択できる人」として伝わりやすいです。
ただし、面積を大きくすると一気にカジュアルになるので、ここでも線で足すという原則は変わりません。ブルベ冬は逆に白×ネイビーの強いコントラストをつくり、スカーフやネクタイは極力マットにしておくと画面でも崩れません。
オンライン面接のときの色合わせ
画面越しは、カメラが明るさを自動で調整するため、白い壁や白いシャツに引っ張られて顔が暗く・青く写ることが多いです。そこで、ブルベでもほんの少し温度を上げた白(真っ青すぎない白)、イエベでもやや明るめの生成りを選ぶと、どのカメラでも破綻しません。
ネクタイ・スカーフは光沢が強いと白飛びするので、マット寄り・中明度・小面積にします。オンラインでは背景とのコントラストも見られるので、白背景の場合はジャケットを濃く、背景が濃い場合はシャツを明るくして目線を顔に集めます。
Q&A(よくある疑問)
Q1. 「白シャツ指定」と言われたら生成りはNGですか?
A. 多くの場合、黄みが強すぎなければナチュラル白〜オフ白は許容されます。迷うなら“白寄りの生成り”を選び、ジャケットを濃色にして白さを相対的に高く見せると安全です。
Q2. 女性がネクタイをしても問題ありませんか?
A. 問題はありませんが、面積・色・結び方をビジネス寄せにするのが前提です。細め・無地〜極小柄・ジャケットの中に収まる長さなら、就職・転職どちらでも浮きません。
Q3. スカーフが似合わない顔型です。どうすれば?
A. 襟の内側に小さく結んで“線”だけを見せる、あるいはもともとリボンがついたボウタイブラウスにして色を布に内包させると、顔型の影響を受けにくくなります。
Q4. 夕方の二次面接で顔がくすみます。色でカバーできますか?
A. できます。ブルベは白度を高めに、イエベは生成りに寄せ、どちらも目の下だけコンシーラーで明るさを足します。さらにネクタイ・スカーフをほんの少しだけ明るくすると、疲れた印象が弱まります。
Q5. 髪色が明るいのですが、白シャツとのバランスが気になります。
A. 髪が明るいときはシャツの白さもややクリアなものにし、スーツを濃色にして全体のコントラストを整えます。逆にスーツまで淡いと、面接では軽く見えます。
Q6. パーソナルカラーと会社のドレスコードが合いません。どちらを優先すべき?
A. 面接ではドレスコードが最優先です。そのうえで、許容される白の範囲内で自分のベースに寄せる、もしくは線で色を足すという順にすれば、どちらも守れます。
Q7. オンラインで首元が暗く落ちます。
A. カメラの位置を目より少し上にし、シャツは明るめの白に。ネクタイ・スカーフはマットな中明度を選びます。背景が暗い場合はジャケットを一段階明るくします。
用語辞典(やさしい言い換え)
ナチュラル白:青すぎず黄すぎない白。日本のオフィス照明で最も無難に見える白。
生成り(オフ白):少しだけ黄み・ベージュみを含んだ白。イエローベースの肌とつながりやすい。
線で色を足す:スカーフやネクタイを細く見せ、色の面積を小さくすること。
顔映り:その色を顔まわりに持ってきたときに、血色やくすみの見え方がどう変わるか。
コントラスト:服と肌の明るさ・色の差。スーツで上げて、シャツで整えると面接で安定する。
青白い白:青みを含むクリーンな白。ブルーベースが着ると冴えて見える。
オフホワイト/エクリュ:やや温かみがあり、イエローベースの肌との境界が目立たない白。
まとめ:面接にパーソナルカラーを持ち込むときの基本は、白の幅をタイプ別に決める→線で1色だけ足す→スーツと髪色でコントラストを整えるという順序にあります。
これを一度決めておけば、一次・二次・最終・オンラインとシーンが変わっても、毎回ゼロから悩むことはなくなります。自分のベースに一段階だけ寄せることで、清潔さ・信頼感と“似合う”を同時に叶えましょう。

