ライブに行く日は、普段の外出とはまったく違う条件が一日に何度も重なります。早朝からの移動でメイクをして、物販や入場列で屋外に長く並び、会場に入ったら一気に温度と湿度が上がり、曲が始まると歓声と汗で顔の表面がしっとりし、終演後はまた外気に触れて冷える。
さらに最近は、スマホでの自撮り・友だちとの写真・リール用の縦動画・XやInstagramにすぐ上げるためのライトな編集など、撮られる機会と残る機会の両方が増えています。このどのタイミングでも「顔色が落ちていない」「チークとリップの色が飛んでいない」「テカリと白浮きのバランスが取れている」状態をキープするには、普通の“長時間キープメイク”だけでは足りません。
とくにパーソナルカラーに沿っていない色をつけていると、照明の色が変わるたびに肌が黄ばんで見えたり、青くくすんだり、リップだけが浮いたりします。だからこそ重要なのは、①自分のシーズンに合う明るさと黄み/青みのベースを選ぶ→②崩れやすいポイントだけをピンポイントで耐久処理する→③ライブ特有の照明で映える色をポイントに足す→④写真・動画で一段階だけ“濃さと輪郭”を足す→⑤マスクや汗で落ちたときのための応急リタッチを用意しておくという5段構成にすることです。
この記事では、まず「なぜライブの日は崩れやすいのか」を環境ごとに言語化し、そのうえでイエベ春・ブルベ夏・イエベ秋・ブルベ冬の4タイプ別にベース作り・チーク・リップ・アイ・ハイライトまでを細かく分けて解説します。
さらに屋外ライブ/大箱/小箱/チェキあり/配信ありといったシーン別の微調整、最後にQ&Aと用語辞典で“どの部分をどう変えればいいか”まで落とし込んでいきます。ここまで読めば、「今日は照明が青寄りだからブルベ夏設定でいこう」「今日は推しカラーが強いからリップを落ちにくい中明度に寄せよう」といった細かな調整が自分でできるようになります。
ライブ参戦メイクが普通の日より崩れやすい理由と仕組み
ライブの日の環境は、家〜会場〜本番〜終演後で質が変わります。朝や移動中は空調で肌が乾燥し、会場に入ると一転して湿度と温度が上がり、曲が始まると汗と皮脂が出て、終演後に外に出るとまた乾く。乾燥→湿度と熱→汗と皮脂→乾燥というサイクルが数時間のうちに起きるので、どこか一か所でも保湿や油分のバランスが崩れていると、そこでメイクがよれたり、粉が浮いたり、色だけが沈んだりします。これが「同じベースを顔全体に塗るだけ」だと失敗しやすい一番の理由です。
さらに、ライブ照明は白一色ではなく、曲ごとに黄色・赤・オレンジ・マゼンタ・青・紫・白と方向が変わっていきます。黄色が強いと黄み肌はさらに黄ばんで見え、青が強いと青み肌はクマや唇の色が目立ちやすくなります。自分のパーソナルカラーと真逆方向の光を浴びるときほど、肌づくりとチーク・リップを自分寄せ(本来のシーズン寄せ)にしておくことが崩れにくさにつながるのです。
また、スマホでの撮影は多くが上からのライト付き、または天井照明の真下での撮影になり、ここでハイライトを入れすぎていると鼻筋だけがギラッと写ってしまうので、ライブの日ほどハイライトの量と入れる場所をコントロールする必要があります。
表:ライブメイクで崩れやすいポイントと対策(拡張版)
| 崩れやすい場所 | 主な原因 | 優先すべき対策 | 追加でできること | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 小鼻・額・眉間 | 汗・皮脂・熱 | 皮脂吸着下地をポイントで仕込む | 仕上げに色なしルースを重ねる | 全顔にマット下地は乾燥を招くのでNG |
| 目尻・二重幅 | 湿気・まばたき・涙 | アイベース+フェイスパウダーでサンドする | ラメは一番最後に“乗せる”だけにする | 上まぶたはクリーム→パウダーの順が安全 |
| 口角・唇 | 水分・歓声・飲み物 | ティント+ティッシュオフで色を密着 | 表面だけバームを細くのせる | グロスを広範囲に塗ると崩れやすい |
| チーク | 摩擦・汗・マスク | リキッド(またはクリーム)+パウダーの二段階で定着 | シーズンに合う色を選んでおくと薄くても映える | 会場が暗い日は少しだけ広めに入れる |
| 鼻横〜ほうれい線 | 表情・湿気 | よく動く部分だけにプレストパウダー | メイク前に保湿を念入りに | パウダーを厚くのせると割れやすい |
パーソナルカラー別のベースづくりと“映え色”の足し方
イエベ春の耐久&映えメイクの作り方
イエベ春は、肌が明るくて血色が出やすく、黄み~オレンジ寄りの色が得意なタイプです。ライブの日は、軽さとツヤを残したまま崩れにくくすることがポイントなので、はじめにコーラルピンクやピーチベージュのトーンアップ下地を顔の中心にだけ薄く広げます。ここで全顔に塗ると白浮きの原因になるので、外側はスポンジでなじませる程度にしておきます。
鼻・額・眉間など汗が出やすいところだけ皮脂吸着系の下地をちょんとのせ、指でなじませたら、薄づきのリキッドかクッションをスポンジで叩き込んで密着させます。ファンデを厚くするとライブ途中で“皮膚の熱”で浮きやすくなるため、気になる部分だけコンシーラーで補うのがコツです。
色は、照明で黄が強くなったときに埋もれないように、コーラル・アプリコット・ピーチに白みを少し足したものが一番きれいです。チークは小鼻横〜黒目の下あたりの高い位置に丸くのせ、外側はぼかしておきます。ライブで顔がほてってきても、もともと入れている色がコーラル系なら“ちょうどいい血色”に見えるので安心です。
リップはコーラルピンク・サーモンピンク・オレンジ寄りピンクなど、笑ったときに歯も明るく見える色を選び、口角だけリップライナーで軽く起こしておくと、動画で口元がぼやけません。
アイシャドウはイエローゴールドよりも、シャンパンゴールド・ベージュゴールド・ピーチベージュのような柔らかい光にすると、会場の黄ライトとぶつからずに立体感が出ます。最後に目の下の三角ゾーンにごく少量だけパールハイライトを乗せると、暗い客席で自撮りしたときでも顔が平らに写りにくくなります。
ブルベ夏の耐久&映えメイクの作り方
ブルベ夏は、青みを含んだ明るめの肌で、赤みが出ても上品に見えるのが特徴ですが、ライブ照明の黄色〜オレンジに当たると一気にくすみやすくなります。まずは、ラベンダー・ブルーグレーなどの青みコントロールカラーをうすーく顔の広い部分に伸ばし、くすみやすい目の下・口角・鼻まわりだけ明るめのコンシーラーで重ねるところから始めます。
こうしておくと、後から汗で部分的にファンデが落ちても“地の色”がブルベ寄りなので、全体のトーンが黄ばまずにすみます。ファンデは、厚塗りを避けて色ムラを整える程度、仕上げに透明〜やや青み寄りのルースパウダーでベタつきをとると、客席での自撮り・終演後の写真でも肌がサラッと写ります。
チークはローズピンク・ラベンダーピンク・青みを含んだスモーキーピンクが一番照明を拾いやすく、舞台からの赤ライト・ピンクライトにも負けません。入れる位置は頬の高いところから横に広げず、やや斜め上にぼかすと、顔がきゅっと上がって見えます。
リップは青みピンク・ローズ・ベリー系をベースにして、ライブのイメージカラーが暖色系なら、口の中心だけに少しだけコーラルを重ねると“浮かないけど血色がいい”バランスが作れます。
アイシャドウはグレージュ・モーヴ・シルバーグレーなど冷たい光を感じる色を選び、黒目の上だけに細くパールをのせて“光を集めるスポット”を作ると、写真や動画で目が小さく写るのを防げます。下まぶたにほんのりパープルやライラックを入れておくと、黄色みが強い会場でも透明感を維持できます。
イエベ秋の耐久&映えメイクの作り方
イエベ秋は、深みと温かみのある色が似合うので、ライブのステージや夕方〜夜の屋外など、光が少ない場面でも顔が沈みにくいタイプです。ただし、汗や照明の“青方向”が重なると、黄みがくすみとして出やすくなります。
ここではまず、黄ぐすみを軽く飛ばすためのベージュ〜オークル系の下地を顔全体に薄く仕込み、フェイスラインとほほ下だけはワントーン暗めで引き締めると、写真で顔が大きく見えるのを防げます。ファンデは厚くせず、ほんのりマット〜セミマットにしておくと、汗をかいても“艶が全部テカリに見える”ことがありません。
チークはアプリコットベージュ・テラコッタ・サーモンベージュ・オレンジブラウンが一番きれいです。リキッドかクリームで一度仕込んでから、同系色のパウダーを重ねる二段階仕上げにすると、腕を振ったりタオルを持ったりして頬に触れても色が残ります。リップはオレンジブラウン・レンガ・カッパー・コーラルブラウンなど、深さのある色を選ぶと、ステージの強いライトやスポットライトにも負けず、衣装が黒やネイビーでも顔が沈みません。
アイメイクは、ゴールド・ブロンズ・カーキ・オリーブなど、秋らしい光を感じる色をメインに、目尻にだけ深いブラウンを細く足しておきます。これで、距離が離れても“目の位置”がはっきりし、写真で目がぼやけるのを防げます。
ブルベ冬の耐久&映えメイクの作り方
ブルベ冬は、はっきりした色・コントラストの強い色・真っ白や真っ黒に近い色が似合うので、ライブのように強い光が当たる場面ではとても映えます。けれども全部を「濃い・強い・ツヤ」でそろえると、写真で硬く見えたり、マスクを外したときに口元だけ派手に見えたりするので、ベースとチークは透明感重視、リップと目元で見せるという配分がきれいです。
ベースは透明感のあるリキッドを極薄に仕込み、赤みやくすみが気になるところだけコンシーラーでカバーします。フェイスパウダーはテカリやすいTゾーンとあごにだけのせ、頬にはほんのりツヤを残しておくと、青や紫の照明が当たっても顔がのっぺりしません。
リップはフューシャ・ディープラズベリー・青みの強いレッド・ワイン寄りレッドなど、ブルベ冬らしい色を選び、輪郭をしっかりとっておきます。ライブの後半で汗をかいても色が残るように、マット系もしくはティントで一度仕上げてから、中央だけに少量のグロスを重ねると立体感が出ます。
チークは青みピンクを小さく入れる程度でOKで、入れすぎるとライブ照明の赤と重なって派手に見えやすいので注意します。アイシャドウはネイビー・パープル・シルバー・チャコールなど、冷たい光を感じる色にしておくと、ステージの青ライトでもにごりません。目頭や上唇の山にシルバーのハイライトを細く入れると、動画でも立体感が出ます。
表:4タイプ別 ライブ向きメイク色早見表(詳細)
| タイプ | ベース下地の色味 | 頬の色(持たせるための質感) | リップ(落ちたときに残る色) | ライブ照明への対策 |
|---|---|---|---|---|
| イエベ春 | ピーチ・コーラルのトーンアップ+部分皮脂下地 | コーラル・アプリコットをクリーム+パウダーで | コーラルピンク・サーモンを輪郭ぼかしで | シャンパン〜ベージュ系ハイライトを目の下に |
| ブルベ夏 | ラベンダー・ブルーグレーを広めに+くすみ部分を明るく | ローズ・ラベンダーピンクを高い位置に小さく | 青みピンク・ローズ・ベリーを中央強めで | 透明パウダーでテカリだけオフし首色と合わせる |
| イエベ秋 | ベージュ〜オークルで全体を整えフェイスラインを締める | アプリコットベージュ・テラコッタを二段階で | オレンジブラウン・コーラルブラウン・レンガで | ブロンズ〜ゴールドで頬の高い所に面の光を作る |
| ブルベ冬 | 透明感リキッドを極薄+部分カバー | 青みピンクを狭く、にじませない | フューシャ・青みレッド・ディープラズベリーで輪郭くっきり | シルバーやホワイトで目頭・上唇上だけ光らせる |
シーン別に見る耐久と見栄えの微調整(屋外・大箱・小箱・チェキ・配信)
屋外ライブ・夏フェス・炎天下の物販列の日
屋外で長時間並ぶ日は、汗・皮脂だけでなく紫外線でベースがくずれやすくなります。日焼け止め効果のある下地をまず全体に塗り、鼻・額・眉間にだけ部分用の皮脂下地を重ねます。パウダーはTゾーンとあごなどテカリやすいところだけに絞り、頬や目の下はツヤを残すと写真映えします。首やデコルテにも少しだけパウダーをはたくと、写真で顔だけ白いのを防げます。
大箱(アリーナ・ドームなどの広い会場)
距離が遠く光も強いので、目鼻立ちが平坦に写りやすいです。ここでは、シェーディングとハイライトをいつもより一段階だけ強くし、目の下〜頬の高いところにパールを細く入れて“光が当たるライン”を作ります。リップは会場のイメージカラーに合わせて少し強めでも大丈夫です。写真を撮るときは、顔の中心のハイライトが強くなりすぎないように、指でなじませておきます。
小箱(ライブハウス・イベントスペース・接近戦の現場)
距離が近いので、厚塗りベースはNGです。ベースは薄く、目元と口元だけきちんと仕上げると生っぽくきれいに見えます。汗をかくので、アイラインはリキッドで耐久の高いものを選び、まつ毛もカールキープのできるものにします。ラメシャドウはごく少量にし、まぶたの中央だけに置くとまばたきでの崩れが少なくなります。
グッズ撮影・チェキ・推しとの2ショがある日
この日は、写真に残ることが分かっているので、チークとリップをパーソナルカラーにぴったり合わせておきます。背景が白なら中明度で、背景が暗いなら少し明るめを選びます。ハイライトは鼻先よりも目の下三角ゾーンを優先すると、肌が均一に見え、編集でも飛びすぎません。リップは二度塗りしてからティッシュオフを一回挟むと、チェキとスマホ写真の両方で色が残ります。
配信カメラ・スクリーンに抜かれる可能性がある日
配信やスクリーンに大きく抜かれるときは、カメラが周囲の色を拾ってくるので、肌をやや中明度に寄せておきます。ツヤは額と鼻先には入れすぎず、目の下や口角横に入れると顔が平らに写りません。リップは光で飛びやすいので、自分のシーズンの中でもやや濃いめを選んでおきます。
Q&A(よくある疑問)追加版
Q1. 汗をかくとチークがすぐ消えます。どうすれば?
リキッドまたはクリームで一度チークを仕込み、その上から同じ系統色のパウダーチークを重ねる“二段階仕上げ”にすると、汗をかいても色が残ります。ブラシよりも指やスポンジでしっかり密着させるとさらに落ちにくくなります。
Q2. マスク時間が長い現場でもリップをきれいに保てますか?
ティントを全体に薄く塗って一度ティッシュオフし、中央だけにツヤを乗せると、マスクを外したときだけきれいに見えます。輪郭はペンシルでごく薄くとっておくと、マスクの摩擦でもぼやけにくいです。
Q3. 照明で顔が白飛びしてしまいます。
ハイライトを控えめにし、シェーディングで輪郭をとっておきましょう。ファンデの色を一段暗くするより、陰影で調整したほうが失敗しません。鼻筋と額の中心は一番飛びやすいので、ライブの日はあえてハイライトを外してもOKです。
Q4. 汗でアイメイクが落ちるのが怖いです。
アイベース→フェイスパウダー→アイシャドウ→ジェルまたはリキッドライナー→マスカラの順で“はさむ”ように重ねると持ちが良くなります。下まぶたのアイシャドウはパウダーだけにして、クリームやリキッドは使わないとにじみにくいです。
Q5. 推しカラーが自分のパーソナルカラーと真逆のときは?
顔まわりは必ず自分のシーズン色でまとめ、推しカラーは目尻のライン・下まぶたの一部・リップの中央・ヘアアクセなど“点”で使います。そうすれば、照明がどの色に振れても顔色だけがくすむことはありません。
用語辞典(ライブ参戦メイク版)
トーンアップ下地:肌を明るく見せるための下地。ライブの日は塗りすぎると白飛びするので、顔の中心だけに使う。外側はスポンジでぼかす。
中明度:明るすぎず暗すぎない、写真や動画に写りやすい明るさ。ライブメイクではここに寄せておくと、照明が変わっても肌が沈まない。
二段階チーク:リキッド/クリームで仕込んでからパウダーで定着させる方法。汗・マスク・歓声で色が落ちる日の定番。チークを2色に分けて内側を濃く外側を薄くすると、さらに立体感が出る。
ポイント下地:小鼻・額・眉間など崩れやすい部分だけに使う下地。全顔に使わないことで乾燥を防ぎ、質感の差で顔に奥行きを作れる。
スポットハイライト:目の下三角ゾーン・目頭・上唇の山など、光を拾わせたい場所だけにごく少量のハイライトを置くやり方。ライブの日はこれを控えめにすることが、白飛び防止になる。

